大判例

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仙台高等裁判所 昭和33年(う)210号 判決

記録によれば原判決は被告人の公訴事実中荒木長福に対する詐欺の事実全部と菅野春子、千葉ヨネに対する詐欺の事実の一部について所論のような理由に基き詐欺罪とならないとして無罪としたことは明らかである。被告人が当時荒木長福、菅野春子、千葉ヨネに対し夫々衣料品の売掛代金の債権を有していたこと、その額が原判決認定のとおりであることはこれを認めることができる。従つて、被告人は右三名から右金員の交付を受ける正当な権利を有する者ということができるから、これを実行するに当り、欺罔の手段を用い、右三名から右金員の交付を受けても、右手段が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱しない限り、詐欺罪は成立しないものということができる。しかし、被告人が右三名から右金員の交付を受けたのは、被告人が正当に有する右売掛代金債権の弁済としてこれが交付を受けたのではなく架空の無尽の掛金名義で相手方を欺罔し、右掛金の払込という売掛代金債権とは全く異る原因に基き右金員の交付を受けたのであつて、右の如き欺罔手段は権利行使の方法として社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を逸脱しておることは明らかであるから、被告人の右所為は詐欺罪を構成するものといわねばならぬ。原判決が被告人の前記の行為を詐欺罪に該らない旨判断したのは法令の適用を誤つたものというべく、右の誤りは判決に影響することが明らかであるから原判決は破棄を免れない。趣旨は理由がある。

(裁判長裁判官 門田実 裁判官 山田瑞夫 裁判官 有路不二男)

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